パートタイム労働法に注意する

改正パートタイム労働法、ってなに?

パートタイム労働者ってどんな意味なの?

フルタイムで働いているパートさんって聞いたことはありませんか?法律でパートタイム労働者とはなんでしょうか?正社員ではない社員?社会保険がない社員?でしょうか。

意外に思われるかもしれませんが、実はこのように定義されています。

「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。ということは、呼称ではなく、就業実態として正社員より短い時間で働く社員すべてを指しているとも言えます。そのため、この改正パートタイム労働法は、パートタイムをはじめ、アルバイト、嘱託、臨時社員、契約社員、準社員と呼ばれる社員でも、正規社員より短い時間で働くすべての方が適用されます。

それでは、改正のポイントをお話しましょう。

一定の労働条件の明示を義務化。

労働基準法により労働条件の明示の交付によって義務付けられている事項に加え、昇給、退職手当、賞与の有無について、文書の交付等(電子メール、FAX可)による明示が義務化されました。

違反の場合は過料(10万円)ですので、注意が必要ですね。これまで「パートさんだから」ということで文書交付までしていなかった会社さんは、雇用契約書を早速準備しましょう。更新時にも契約書を交付しましょう。

待遇決定についての説明を義務化。

雇い入れ後、パート労働者から求められたとき、待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明することが義務化されました。(説明義務が課せられる事項・・・労働条件の明示、就業規則の作成手続き、待遇の差別的取扱い、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、正社員への転換を推進するための措置)

パートさんに今まで以上に働いてもらうため、会社さんは説明責任を果たしましょう。賃金、労働時間、職務内容等、説明できるだけの根拠ある仕組みづくりが求められます。

「正社員と変わらないパート労働者」の待遇差別の禁止。

職務の内容(業務の内容と責任の程度)、人事異動の有無や範囲、契約期間の3つの要件が正社員と同じかどうかを見て、同じと判断されるパート労働者の賃金、教育訓練、福利厚生などすべての待遇について、パートであることを理由に差別することが禁止されました。

職務の内容、といってもその職務に課せられた責任、知識、技術など総合的に、その同一性を判断することになっています。職種が同じでも、職務(責任の程度)は異なることがあります。これを会社さまが社員に論理的に説明できる仕組みが必要です。

正社員への転換措置を義務化。

事業主は次のいずれかの措置を講じなければなりません。

  • 正社員を募集する場合、その募集内容を社内のパート労働者に周知する。
  • 正社員のポストを社内公募する場合、社内のパート労働者にも応募する機会を与える。
  • パート労働者が正社員へ転換するための試験制度を設けるなど、転換制度を導入する。

その他、正社員への転換を推進するための措置

正社員登用制度を就業規則に定めて実際に登用した、または雇用の均等待遇措置を図った場合、助成金を活用することができます。

パート労働者からの苦情対応を努力義務化。

パート労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図ることが努力義務化されました。紛争解決援助の仕組みとして、都道府県労働局長による助言、指導、勧告、紛争調整委員会による調停が設けられました。

紛争解決を求めたことで、会社がそのパート労働者に不利益扱いをすることも禁止されています。

改正パートタイム労働法と就業規則

正社員以外にも雇用契約書を交付する。

改正パートタイム労働法は正社員より就業時間が短い社員全員が対象者ですから、今後は入社時、契約更新時には対象者全員に雇用契約書を交付しましょう。

正社員以外の就業規則を作りましょう。

趣旨は上記と同様です。パートタイム、アルバイト、嘱託、契約社員、準社員など呼称は会社さまそれぞれですが、正社員以外の社員が1人でもいるのでしたら、別途それぞれの就業体系に対応した就業規則を作成、届出が必要です。

正社員と明確な差異のある雇用管理体制が必要です。「名ばかりパート」にならないために・・・

パートさんの職務の内容(業務の内容と責任の程度)、人事異動の有無や範囲、契約期間の3つを厳格に管理できないと正社員と同一の処遇(賃金、教育訓練、福利厚生)を行う必要が出てきます。正社員とパートさんとはこの3点が『違う!』ことを明文化すればよいのです。今後は「名ばかり管理職」に続き、『名ばかりパート』問題が増加するかもしれません。

もし、こうした雇用管理体制ができないときには契約更新は2回まで、その後は正社員登用するなど雇用期間の管理を徹底する以外対処法はありません。

そしてまずは義務化された、労働条件の書面交付、待遇決定についての説明、正社員への転換措置を最優先に取り組みましょう。

具体的な作成ポイント

  1. 適用する範囲の定義を明確にしましょう。 例:1日の就業時間が○時間未満の従業員、○ヶ月の雇用期間
  2. 基本給、手当、賞与、退職金、昇給の手続や条件を明らかにします。
  3. 残業や休日出勤の有無、もしあるならどのようにさせるのか?手続方法、条件を定めます。
  4. 年次有給休暇の付与日数や取得手続、週30時間未満の社員対応のため、比例付与の適用も考えましょう。
  5. 特別休暇、慶弔見舞、休職制度、福利厚生制度の適用の有無と手続方法、条件を定めます。
  6. 出向、異動、転勤の有無、もしあるならどのようにさせるのか?手続方法、条件を定めます。
  7. 服務規律、懲戒規定の適用の有無、解雇の手続き
  8. 兼業許可制、機密保持、競業避止義務の有無
  9. 無期転換ルール
  10. 正社員転換のチャンス

この制度の背景にあるのは、単なる非正規社員の待遇アップだけではなく、非正規社員の新たな掘り起こし、つまり企業における効率的な人材活用です。みなさんもこれをチャンスに新たな戦力を発見できるかもしれません。