労働基準法と就業規則

労働基準法で就業規則はどうなってるの?

労働基準法は労働条件の最低基準を定めた取締法規であり、使用者に対しては罰則を課してでも強制的に義務を履行させ、それを行政が監督指導できることになっています。

そして労働者が1人以上いれば、使用者が労働基準法を仮に知らなくても、その事業所は当然に労働基準法の適用を受けることになります。

就業規則に定めた内容が労働基準法や労働協約を下回る基準であれば、当然にその部分は無効となり、自動的に労働基準法や労働協約の基準が適用されます。(労基法92条1項)

行政官庁は作成された就業規則が法令や労働協約に抵触していると判断したときは、就業規則の変更を命じることができるとも規定されています。(労基法92条2項)

また労働関連諸法令で定めのない事項に関しては、民法の雇用に関する規定が適用されます。

労働基準法に就業規則の罰則はあるの?

取締法規だけに30万円以下の罰金から10年以上の懲役刑まで、数多くあります。労働基準法は労働基準監督官に司法警察権を与えていますので(労基法102条)、事業所を立ち入り検査したり(労基法第101条)、使用者の行為が悪質な場合や行政指導で解決できないときは逮捕、送検もできるように規定されています。つまり労働基準法違反は刑事上の犯罪になることもあるのです。

このほか代理人、使用人その他従業者が労働基準法違反をした場合は事業主も責任を負い、原則として罰金刑を科せられます。つまり社長が知らないところで管理監督者が判断したことであっても、会社の責任は免れません。

しかし、次の場合には、事業主も行為者として処罰され、懲役刑の対象となる場合があります。(労基法第121条)

  1. 事業主が違反の計画を知りその防止に必要な措置を講じなかった場合。
  2. 事業主が違反行為を知りその是正に必要な措置を講じなかった場合。
  3. 事業主が違反を教唆した場合。

就業規則に関わるもの主なものは30万円以下の罰金です。十分にご注意ください。

第89条(就業規則の作成及び届出の義務) 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し行政官庁に届出なければならない。 第90条 第1項(作成の手続) 使用者は就業規則の作成又は変更について労働組合又は労働者過半数代表者の意見を聴かなければならない。 第91条 (制裁規定の制限) 就業規則で減給の制裁を定める場合は、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。 第92条 第2項(法令及び労働協約との関係) 行政官庁は法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができる。 第106条 (法令等の周知) 使用者は法律及び就業規則を掲示、書面交付、備え付ける等して労働者に周知させなければならない。

就業規則に民法の考えを取り入れましょう!

労働基準法には罰金や、逮捕、送検があるので、それだけでも会社にとっては十分怖いのですが、今の時代、民事の損害賠償請求も脅威です。

具体的には過労死や精神疾患による会社への損害賠償請求です。これらは刑事事件になってもならなくても、全く別で会社に請求されうるものだからです。いわゆる安全配慮義務違反による「使用者責任」の追及です。

裁判所は会社の使用者責任を重く見る傾向にあり、高額の支払命令を出しています。会社は使用者責任として、日常の労務管理体制が問われます。労働基準法を守っているから、大丈夫!と思っては危険です。民法の規定にも配慮した労務管理が必要となってきたといえるでしょう。