労働基準監督署と就業規則

就業規則の変更命令!労働基準監督署の権限

行政官庁(労働基準監督署)は作成された就業規則が法令や労働協約に抵触していると判断したときは、就業規則の変更を命じることができることが規定されています。(労基法92条2項)

労働基準法で、労働基準監督官に司法警察権を与えていますので、使用者の行為が悪質な場合や行政指導で解決できないときは逮捕、送検もできるように規定されています。つまり労働基準法違反は刑事上の犯罪になることもあるのです。

就業規則と不思議な監督署?

労働基準監督署では、担当者にもよりますが、窓口で就業規則全文をチェックすることはまずありません。時間的な問題だと思いますが、パラパラと労働時間や定年規定あたりを見て、収受印を押して、副本を返してくれます。受け取った副本は会社で大切に保存します。

届出する会社さまとしては、「労働基準監督署に何か言われるではないか・・・」とヒヤヒヤしていたかもしれないのに、あっさりと「おつかれさまでした。副本です。」と終わります。

ここで少し不思議な気がしませんか?

労働基準監督署は就業規則のすべての内容をチェックせずに、収受しました。

届出したらそれですべてOKなのでしょうか?

確かに監督署はその時は全文をチェックしませんが、「後日内容をチェックする」と言っています。

そのときに連絡する会社の担当窓口を聞いたりしています。法律的に問題がなければ後日連絡が来ることはないと思いますが、届け出るべき協定書が未届けだったり、法定を下回る基準で定められた条文があれば後日、連絡があると思ってください。つまり会社に有利不利を問わず、法的に問題がなければ収受されるわけです。仮に会社にとって不利な条文があっても、監督署がそれをチェックしてくれるわけではありませんから、会社は独力でしっかりと内容を吟味しなければなりません。

就業規則の効力としては、実は監督署への届出よりも社員への周知の事実が優先されます。常時10人未満の会社さんの場合、法的には届出の義務が課されていないので、届出自体を効力要件にしていません。

「労働基準監督署に対する就業規則の届出は、就業規則の内容についての行政的監督を容易にしようとしたものに過ぎないから、届出は就業規則の効力発生要件ではなく、使用者が就業規則を作成し、従業員一般にその存在及び内容を周知させるに足る相当な方法を講じれば、就業規則として関係当事者を一般的に拘束する効力を生じると解すべきである。<中略>(NTT西日本事件、京都地裁、平成13年3月30日判決)」

「監督署へ届出が終わったから、安心!」なのではなく、社員へ周知徹底できたときから就業規則の効力が発生するとお考えください。もし就業規則で定められた施行日より周知日が後であれば法律的には周知日から効力は発生すると考えられています。