業種別に注意する

人材派遣業の就業規則

派遣スタッフは基本的には派遣元の就業規則が適用されますが、派遣先の就業規則に従う部分もありますので、派遣スタッフには個別に説明が必要になります。そして、一般社員と派遣スタッフは就業形態が異なるので、就業規則は別々に定めておきましょう。

(1)採用、異動、服務規律、賃金

派遣前研修を実施して派遣することが多いかと思います。登録型社員の場合、この研修時に問題行動があった場合には、登録自体を抹消することを記載しておきましょう。

派遣先が決定して、実際に働き始めたら派遣先の指揮命令に従う必要があることも理解してもらいましょう。トラブルが生じたときの対応窓口も明確にしておきます。

服務規律は派遣先によって異なることが多いので、「派遣先の就業規則に従う」、という内容を規定しておくと、無用なトラブルは避けられます。

派遣先での異動、出張が想定されるときは、事前に労働契約書で決めておきます。

賃金など個別に異なる条件は、労働契約書でできるだけ詳細に取り決めしておきましょう。

昇給、賞与、退職金まで明示しておくことが必要です。

(2)労働時間、休憩、休日、休暇

労働時間や休憩、休日は「派遣先の就業規則に従う」と明記します。そして変形労働時間制、フレックス制が適用されるときは事前に派遣元と相談するよう、明記しておきます。

(3)退職、解雇、セクハラ、懲戒

退職、解雇、懲戒については正規社員同様、手続き等具体的に記載しておきます。派遣社員はセクハラの危険が高いのでこのような場合の取扱についても明記しましょう。

IT企業の就業規則

IT企業は正規社員以外に、派遣や出向など雇用形態が複雑なケースが多いので就業規則の適用範囲を明確にしておきます。できれば雇用形態ごとに就業規則を作成しましょう。

(1)採用、異動、服務規律、賃金

特に問題になりやすいのは「特定地位者」、特別なスキルや能力があるため高い報酬で採用される場合です。実際に入社後、そのスキルや能力が不足していた場合であっても簡単に解雇できませんので、レベルに応じた入社試験を実施した上で採用を決定しましょう。

IT企業の多くは自由な社風、例えば服装が非常にラフであったりしますが、身だしなみに関する規定が無い場合、服装を注意することが難しくなることがあります。企業人として一定レベルの身だしなみを保つためにも規程が必要だと思います。

業種の特徴として機密情報の漏洩には特に留意しなければなりません。在職中はもとより退職後まで機密保持責任を明記しておきましょう。

(2)労働時間、休憩、休日、休暇

システムトラブルなど突発的な業務が多く発生する部門については社外や顧客先での対応が深夜に及ぶことも考えられます。このようなときの指示命令系統を明確にしておくことも大切です。

急なトラブルや顧客対応により労働時間が長時間化する場合、変形労働時間制やみなし労働時間制、業種によって裁量労働制なども検討してみましょう。長時間労働によるメンタルヘルスも注意したいところです。

(3)退職、解雇、セクハラ、懲戒

IT企業の自由な社風を誤解させないよう、退職や懲戒についても詳細に規定しておきましょう。

IPO(株式公開)の就業規則

IPOをお考えでしたら、就業規則本則以外にも多数の諸規程を整備しなければなりません。公開審査では、社内規程が会社の規模や業種に応じて適切に整備されているかどうか、またそれに沿って業務が行われているかどうかが問われます。規程は少なくとも上場直前1年前以上の運用状況が審査されますので、早めに作成して運用する必要があります。そしてIPOは適正な労務管理が大前提ですから、労使トラブルは厳禁です。トラブルにより公開が延期されることもあります。そのためにも就業規則は細部まで注意が必要です。そして前文には御社の経営理念を表現豊かに織り込みましょう。

公開審査には4つのポイントがあります。労務面のコンプライアンスは特に重要視されており、審査は年々厳しくなっているようです。

  1. 就業規則の整備・運用
  2. 労働時間の適正管理
  3. 安全衛生管理体制の整備
  4. 労働保険・社会保険の適正加入

(1)採用、異動、服務規律、賃金

就業規則だけではすべてを規定できませんから、詳細は個別の規程に委任することになります。

以下、公開審査に必要な主たる諸規程です。労務、総務的な事柄以外にも非常に細かいところまで作成しなければなりません。

主な諸規程
基本規程 定款、取締役会規程、監査役会規程、経営会議規程、株式取扱規程
組織関連規程 組織規定、職務分掌規程、職務権限規程、稟議規程
人事労務規程 就業規則、賃金規程、退職金規程、人事考課規程、旅費規程、育児介護休業規程、機密保持規程、兼業許可規程、競業禁止規程、出向規程、教育研修規程、能力開発規程、人事異動取扱規程、預金管理規程、財形貯蓄取扱規程、従業員持株会規程、在宅勤務規程、車両管理規程、私有車両通勤管理規程、再雇用規程、被服貸与規程、慶弔見舞規程、提案制度規程、セクハラ防止規程、従業員貸付金規程
業務関連規程 経理規程、原価計算規程、資産管理規程、予算管理規程、情報管理規程、内部監査規程、販売管理規程、与信規程、生産管理規程、購買管理規程、外注管理規程
総務関連規程 規程管理規程、印章管理規程、文書管理規程、金庫管理規程、社員証取扱規程、安全衛生管理規程、安全委員会規程、社宅管理規程、インサイダー取引防止規程、個人情報保護規程

(2)労働時間、休憩、休日、休暇

労使トラブルは絶対に避けなければなりませんので、法定の労使協定締結・届出は漏れなく実施しましょう。36協定をはじめ、1週間、1ヶ月、1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、企画業務型・専門業務型裁量労働制、事業場外労働、年次有給休暇の計画的付与、一斉休憩除外、賃金控除・貯蓄金管理に関する協定など多数あります。

(3)退職、解雇、セクハラ、懲戒

特に休職、懲戒、解雇については労使トラブルが多発しやすい部分ですので、条文の表現にまで留意して細部まで規定しておきます。

運送業の就業規則

(1)採用、異動、服務規律、賃金

拘束時間が長い業種なので、残業代問題は深刻です。賃金規程が実態と合致しているかどうかまずチェックしてみましょう。「完全歩合給」制を採用していることで、労働時間管理していない会社さまはありませんか?未払い残業の可能性大です。

自動車事故による使用者責任の追及もありますので、社員の健康管理体制にも配慮してください。

(2)労働時間、休憩、休日、休暇

トラック運転手やタクシー運転手は「労働時間などについての改善基準の告示」により労働時間を適切に管理しましょう。長時間労働による自動車事故は使用者責任が問われます。

(3)退職、解雇、セクハラ、懲戒

特に懲戒規定に連動させた運行者心得、車両管理、自動車事故に関する規定を明示しておきましょう。

建設業の就業規則

(1)採用、異動、服務規律、賃金

労働時間が長くなりやすいため、残業代の算出方法にも工夫が求められます。会社と現場間の移動時間を直行、直帰を組み合わせて効率的に運用したいところです。

重機や工具の取扱は事故の元にもなりますので、安全衛生面からも厳格に管理する規定を定めておきましょう。

(2)労働時間、休憩、休日、休暇

会社と現場間の移動や天候に左右されて、どうしても拘束時間が長くなります。労働時間の管理手法は一工夫必要です。過重労働など健康管理に配慮しておきませんと、重大な労災事故にも発展しかねません。

(3)退職、解雇、セクハラ、懲戒

建設業における現場でのトラブルは社外の出来事なので、会社に伝わりにくく、深刻になることが多いようです。何事も上司に報告する社内体制を就業規則で明示して、しかるべき対応を実施できるようにしておきましょう。

飲食・販売業の就業規則

平成20年4月から改正パートタイマー労働法が施行されています。パートタイマーやアルバイトも働き方によっては正規社員と同等の処遇を求められるようになりましたので、注意が必要です。またパートやアルバイトがいる会社さまは正規社員とは別に就業規則を定めておきませんと、全面的に正規社員用就業規則が適用されることになります。

(1)採用、異動、服務規律、賃金

接客業ですから服務規律や身だしなみ規程は御社の求めるレベルで具体的に規定しましょう。

「営業手当を支給している」ことを理由に営業職に対して残業代を支払わないのは問題です。

現在の規定を見直して、残業代を適法に支給する仕組みに変えましょう。

「店長」が、管理監督署の要件を満たしていなければ、残業代の支払が必要です。

既存の規定を見直して、適正な残業代支払の方法を検討しましょう。マクドナルド事件以来、業界全体が残業代支払への動きを進めています。

(2)労働時間、休憩、休日、休暇

定休日がない、または24時間営業などのシフト制でしたら、1〜3ヶ月単位の変形労働時間制を検討して、効率的な時間管理をしましょう。長時間勤務による過重労働が起きやすい業種ですので、メンタルヘルスなど健康管理面も配慮しましょう。

(3)退職、解雇、セクハラ、懲戒

業種の特性のためか入退社の頻度が高いように思います。スムーズな業務運営のためにも引継を含めて、退職の具体的手続きを明確に定めておきます。

製造業の就業規則

(1)採用、異動、服務規律、賃金

労働時間は他の業種と比較すると管理しやすいので、上司の厳格な指揮命令による残業を徹底させるよう規定しましょう。(勝手残業の根絶)

特殊な技術、発明、特許等に関する権利関係を規定で定めておきましょう。

(2)労働時間、休憩、休日、休暇

「QC(品質管理)サークル」活動にも残業代の支払が必要であることが明確になりました。(トヨタ自動車過労死認定裁判)今後は大部分を業務として認める必要が出てきましたので、労働時間の取扱には注意してください。

労災事故が多い業種ですから、安全衛生教育を行う規程作りも必要です。

(3)退職、解雇、セクハラ、懲戒

熟練した高齢技術者は会社の財産ですから、後輩の指導や技術面で定年後も会社に貢献してもらえるよう再雇用制度、賃金・退職金制度の見直しをしましょう。

病院など医療関係の就業規則

(1)採用、異動、服務規律、賃金

現在人材不足が最も深刻な業界だと言われています。賃金等は業界水準もあり、大きく変えることは困難ですので、賃金以外の待遇、福利厚生や退職金制度を見直すことで人材確保を図ります。

(2)労働時間、休憩、休日、休暇

定休日が少ない、または24時間稼動などのシフト制でしたら、1〜3ヶ月単位の変形労働時間制を検討して効率的な時間管理をしましょう。長時間勤務による過重労働が起きやすい業種ですので、メンタルヘルスなど健康管理面も配慮しましょう。

(3)退職、解雇、セクハラ、懲戒

個人情報の漏洩には特に留意しなければなりません。在職中はもとより退職後まで機密保持責任を就業規則に明記しておきましょう。