休日・時間外労働に注意する

労働時間は残業時間を含めて、どの企業でも悩みが尽きない問題です。残業時間管理は人件費に直結しますから、会社経営に大きく影響します。しかし会社の特性に合わせた管理方法を採用すれば、効率的な残業時間に組み替えることができます。労働時間や残業代については労働基準法がきっちり従業員を守っています。残業代で従業員と会社が争うと会社にほとんど勝ち目はありません。会社が一番工夫しなければならない部分なのです。労働時間の管理こそ最も効果的な経営戦略です。

労働時間とは?

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令の下にある時間のことで、「拘束時間から休憩時間を除いたもの」です。労働時間には、現実に働いている時間のほか、使用者の指揮下にあって待機している時間も含まれます。例えば、商店における客待ち時間などです。休憩時間の定めがないものは、基本的に労働時間となります。着替えや掃除時間でも会社が命令したものであれば、指揮命令下にあったとして労働時間と考えられています。会社が命令した拘束時間、つまり休憩時間以外のすべてが労働時間となります。

法定労働時間と所定労働時間は違う 使用者は労働者に、原則として、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはなりません。また、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはなりません。但し特例措置として常時10人未満の商業、映画(製作は除きます)・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業は週40時間まで労働可能です。法律で規定した1週40時間、1日8時間のことを「法定労働時間」と呼びます。「所定労働時間」とは、会社が取り決める労働時間を指します。使い分けにご注意ください。

時間外・休日労働とは?(いわゆる残業)

時間外・休日労働とは、1週40時間・1日8時間(法定労働時間)を超えた時間を言います。残業については労働者が不利に扱われないよう、労働基準法できっちりと規定されています。

会社は従業員に残業をさせたいときは、労働者の過半数で組織する労働組合か、過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者と労使協定(書面による協定)を締結し、36協定という協定書を労働基準監督署へ提出しなければなりません。

会社規模や人数を問わず、36協定がないと、「違法な残業」となります。

「1ヶ月の所定労働時間の平均」を計算して、173.8時間以内になっていますか?

もしこれを超えていたら法律違反です。どういうことかと言いますと、労働基準法では、所定労働時間は1週40時間以内と定められているからです。

つまり所定労働時間は最大で1週40時間ですから、1週40時間で計算すると、

「1ヶ月の所定労働時間の平均」=40(時間/週)÷7(日)×365(日)÷12(ヶ月)=173.8(時間/月)

となります。

月当たり173.8時間を超えた場合は、1週40時間を超えていますので、会社は173.8時間以下の所定労働時間にする必要があります。そして超過時間は時間外=残業として扱うことになります。

所定労働時間を超えて労働させる場合であっても、法定労働時間を超えない限り、労使協定の締結・届出は必要ありません。(ただし、就業規則等で時間外労働を命じる根拠は必要です。)

労働時間・休憩・休日の適用除外者

労働時間・休憩・休日の規制がかからない、適用除外者はこの3つです。

この適用除外者というのは、業務の性質上から、または経営者と一体となって働くことが求められる立場であることを考慮して、法律であえて規制しなくても問題ない、と考えられてきたからです。

この時代、中小企業で問題になるのは「残業代が要らない」と扱われる「管理監督者」でしょう。(管理監督者でも深夜割増は元々必要です)

マクドナルド事件以来、「名ばかり管理職」問題として業界も対応を急いでいます。

現在「管理監督者」として認められる条件はこの3つと言われています。

  1. 経営者と一体になって経営管理している
  2. 出退勤の管理は受けない(出社時間、退社時間、休日が自由)
  3. 給与・賞与が管理監督者に見合った高水準である

課長以上は「全員管理監督者」、現在はこれは認められませんから取扱にご注意ください。

この3つの条件から考えますと、中小企業で通常の管理職といわれる従業員は、ほとんど「管理監督者」に該当しないことになります。その結果、通常の社員と同様に労働時間管理を行う必要があります。

もし「管理監督者」として処遇する場合は、上記3つの条件を満たすように再検討してください。

残業するなら「36協定」その内容

36協定は以下の内容を定めます。

  1. 時間外または休日労働をさせる必要のある具体的な事由
  2. 対象労働者の業務
  3. 対象労働者の人数
  4. 1日についての延長時間のほか、1日を超え3か月以内の期間の延長時間
  5. 1年間についての延長時間
  6. 一定の期間に労働させることができる休日とその始業・終業時刻
  7. 有効期間

時間外労働の限度に関する基準

36協定の締結に関しては、労働時間の延長の限度等において、労働者の福祉・時間外労働の動向などを考慮して基準(告示)を定めています。

ココがポイント!
  • 36協定の有効期間は1年間なので、毎年作成・届出の必要があります。きちんと作成・届出しましょう。
  • 休日労働には制限がありませんから、もし協定で定めた限度時間を超えそうなら休日出勤させることも検討します。
  • 徹夜労働の可能性がある会社さまは1日の延長時間を15時間と定める必要があります。

限度基準の時間は次のとおりです。

(1)一般の労働者の場合

期間限度時間
1週間15時間
2週間27時間
4週間43時間
1か月45時間
2か月81時間
3か月120時間
1年間360時間

(2)対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者の場合

期間限度時間
1週間14時間
2週間25時間
4週間40時間
1か月42時間
2か月75時間
3か月110時間
1年間320時間

適用除外

次の事業または業務については、業務の特性から上記の限度時間は適用されません。

つまり上限なし、になっています。

特別条項付き協定

臨時的に上記の限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合に、次のような特別条項付き協定を結べば、限度時間を超える時間を延長時間とすることができます。

実際の残業時間が36協定に記載された時間を超えていると、是正勧告の対象となります。

「特別な事情」が予想されましたら、ご検討ください。

しかし1ヶ月の延長時間が80時間を超える協定になると、監督署へ経過報告が義務付けられるようになりました。ご注意ください。

協定例
『一定の期間についての延長時間は1か月30時間とする。ただし、通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したときは、労使の協議を経て、1か月50時間までこれを延長することができる。この場合、延長時間を更に延長する回数は、6回までとする。』

なぜ残業させるのか?『特別の事情』を具体的に特定することがポイントです。

OK! 臨時的と認められるものの例
予算、決算業務ボーナス商戦に伴う業務の繁忙、納期のひっ迫大、大規模な顧客クレームへの応対、機械のトラブルへの対応
NG! 臨時的と認められないものの例
(特に理由を限定せず)←ココに注意!業務の都合上必要なとき、業務繁忙なとき、使用者が必要と認めるとき、年間を通じて適用されることが明らかな事由

休日とは? 1週1回、4週4回以上が必要です。

休日(労基法第35条)
毎週少なくとも1回の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなくてはなりません。休日とは、原則として暦日(午前0時から午後12時までの24時間)をいい、労働契約において労働義務がないとされている日のことです。労働契約で労働義務がある日について使用者が労働の義務を免除する「休暇」とは異なります。ただし番方編制による交替制の場合で、例外的に継続24時間をもって休日と認められることがあります。

休日の振替と代休 使い分けがポイント!

振替とは?「振替は割増分がかからない」は誤解

事前に、あらかじめ定められた休日を同一週内の別の出勤日に振り替えて、当初の休日を労働日に変更することです。休日出勤となる前に、その休日は通常の労働日に変わっていますから、休日出勤としての割増賃金は不要です。

しかし同一週内に振替られず、週をまたいだときや、事前に振替休日を定めていても、実際に休めないと25%又は35%の割増賃金が発生します。1週1日の休日と週40時間の2つの規制を受けるからです。

振替管理が曖昧な場合、結局割増分を計算することになりますので、時間管理が複雑になりやすいといえます。「振替は割増分がかからない」は誤解です。振替方法に注意しましょう。

代休とは?「割増分がかかるから使いにくい」は誤解

休日出勤した後で、その休日労働の代わりに他の労働日に休日を取得することです。すでに休日出勤していますから休日労働の25%又は35%の割増賃金が必要になります。

代休の場合は、出勤した休日の割増賃金が必要なわけですが、125%又は135%の割増賃金を支給していたときは、当然代休日は無給でOKです。月給者の場合はつい二重払いしてしまうことがあります。ご注意ください。

そしてすでに休日割増も含めて割増賃金が払われているので、振替のように1週1日以上の法定休日の制限も受けません。

さらに代休は法的義務ではないので、会社は必ずしも代休を与える必要がありません。そして代休は振替のように直近に与えなくてもよいので、業務の繁閑に合わせてまとめて与えることも可能です。振替よりも柔軟な運用が可能です。

振替と代休、どっちがトクなの?

振替が同一週内で完全に実施できれば、割増賃金分の支払が不要なので、振替がオトクです。

週を跨ぐ振替や、振替日が未定なら125%又は135%の休日割増をその都度きちんと払って、ヒマな時期にまとめて代休(この日は無給にする)を与えるのがオススメです。

要は「休日の振替が同一週内でできるか?」これをポイントに会社が使い分けをすることです。

休日と休暇の誤解

休日を増やすときは注意が必要です。

休日と休暇はどう違うのか?お考えになったことはおありでしょうか?

休日を減らすと時間単価が上がります。休暇を増やしても時間単価は変わりません。

あまりピンとこないことかもしれません。

休日は労働義務のない日、休暇は労働義務が免除された日と定義できます。

つまり労働してもしなくてもいい日という意味になります。

休暇は、年次有給休暇が一番イメージしやすいですね。そのほか会社によっては慶弔休暇が一般的です。

でも実際にどう違うのか?こんな計算をしてみましょう。

パターンA パターンB
1日労働時間 8時間
月給 30万円
年間休日 105日 125日
年間労働日数 260日 240日
年間平均所定労働時間 260日÷12ヶ月=21.6日 240日÷12ヶ月=20.0日
平均月間労働時間 21.6日×8時間=172.8時間 20.0日×8時間=160.0時間
時間単価 30万円÷172.8時間=1,736円 30万円÷160.0時間=1,875円

休日20日で時間単価が139円も差がつきます。同じ給与でも休日数次第でこれだけの差がついてしまうのです。

割増賃金はこの時間単価に25%、35%、60%加算されますから、社員数と残業時間を乗じていくと、かなり大きな金額となって会社を襲います。

このように休日を増やせば所定労働時間が短くなるので、時間単価を必ず押し上げます。

その結果、実質的な賃上げとなります。

人件費から見ると、休日を増やすより、休暇を増やす方がオトクといえます。

休暇は時間単価に何も影響を与えないので、人件費管理から見ると休日よりも、付与しやすい休みです。

「時間単価を上げずに(=休日を増やさない)、社員を休ませる」方法として夏季休暇や年末休暇期間に有給休暇の一斉付与を行うことは、まさに休暇の特性を活かした対策です。また年次有給休暇以外は会社裁量で無給の定めも可能です。

休日を決めるとき、または変更するときはぜひご検討ください。

割増賃金とは?

割増率はこのようになっています。

1日8時間、1週40時間を超える残業時間
25%以上増し

(所定労働時間が8時間未満の場合は8時間を超える時間が25%対象)

1週1日の休日の法定休日も出勤
35%以上増し

(週休2日制の会社なら、その1週間で1日も休めなかったときが35%対象)

22:00〜5:00の深夜労働
25%以上増し
残業+深夜
50%以上増し

(残業25%+深夜25%=50%増し)

休日+深夜
60%以上増し

(休日35%には残業という考えは無いので、朝から8時間を超えても深夜時間帯まで35%増し)

割増賃金単価を計算します。

  1. 割増賃金単価は月給者でも必ず年間平均所定労働時間から時間給計算します。

    単純にその月の出勤日の日数を分母に計算すると、単価が毎月変動してしまうので問題が残ります。

    Aさんの場合
    年間休日105日、年間労働日260日、所定労働時間8時間の会社に勤務
    年間労働日260日÷12ヶ月×所定労働時間8時間=年間平均所定労働時間173.3時間
    Aさんの月給300,000円(交通費、その他手当なし)
    月給300,000÷173.3時間×1.25〜1.60などの割増率=割増賃金単価となります。
  2. 割増賃金単価を計算するときは、基本給に手当もプラスして(一定の手当以外)計算します。

    よく基本給だけで計算してしまうことがありますが、手当も忘れずに含めましょう。

除外してもよい手当(これらに限定されていますから、要注意です!)
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時の手当、1ヶ月を超える期間に支払う賃金

実費弁済的、臨時的な性質があるものは割増賃金には入れなくてもよい、という考え方があるためです。

特殊な割増賃金の計算について

歩合給の計算方法

歩合給の場合、割増分25%や35%の支払のみで、100%部分は不要です。(すでに歩合給で支払い済み)

そして割増賃金単価は所定労働時間ではなく、総労働時間を元に計算します。

Bさん
歩合給100,000円 所定労働時間168時間+残業時間32時間=総労働時間200時間
Bさんは200時間働いた成果が100,000円の歩合給です、すでに100%分は支給済みと考えます。
歩合給100,000円÷総労働時間(168H+32H)=時間単価500円
時間単価500円×割増率25%=割増分125円 *125%ではないことに注意!
割増分125円×32時間=割増賃金4000円

みなし労働の計算方法

裁量労働制や事業場外のみなし労働時間制を採用している場合も計算方法が異なります。

「みなし」とは実際の労働時間に関わらず、労使協定で定めた時間を労働したものと「みなす」制度です。定めた時間が『1日9時間』なら1日1時間の時間外労働があったと考えます。たとえ労働時間が不足しても「労働した」とみなします。そして月給が『1日9時間』働くものとして決定している前提が必要です。

Cさん
月給250,000万円(1日9時間働くことを想定)皆勤手当20,000円 合計270,000円
1ヶ月のみなし労働時間9時間×最大日数23日=207時間、
月給総額(250,000円+20,000円)÷207時間×25%×23日=1ヶ月の割増賃金7,500円(円未満切り上げ)

1日9時間働くことを前提に月給を決定することが必要です。

危険な残業計算

労働基準監督署の調査などで、未払い残業が発覚すると是正勧告書が会社に渡され、是正を求められます。

未払い残業が発覚すると、原則的に調査から2年遡って全社員の残業代再計算をさせられ、もちろん残業代支給までしなくてはなりません。是正勧告書にプラスして未払い残業代の計算結果と支払明細書を提出させられます。監督署に「残業代支払、やっときました!」と口頭で報告しても、認めてもらえません。

従業員の人数によっては会社にとっては大変な事務作業ですし、未払い残業代も多額になります。考えるだけでいやになることですが、今からきちんと対処しておけば、恐れるものではありません。

未払い残業に至ってしまうケースを分類するとこのようになります。御社に当てはまるものがあったら、大至急対応が必要です。

上限時間申告型
上限時間を決めて、それ以上残業をしてもカウントしないから残業代不足が出る。
上限時間20時間、実際の残業時間30時間
10時間残業代が不足!
下限時間設定型
一定時間以上残業しないと残業自体カウントしない。
20時間以上残業すると残業代を支払う、実際は10時間残業した
残業代0円なので、10時間残業代が不足。
自己申告型
自己申告の時間と実際の時間が違っていて、残業代不足が出る。
自己申告10時間、実際の残業時間20時間
10時間残業代が不足!
定額型
何時間残業しても同じ残業代。定額分を時間超過すると残業代不足が出る。
毎月3万円(20時間分)の固定残業代、実際の残業時間が30時間
10時間残業代が不足。
振替休日消化できなかった型
休日出勤8時間(日曜日)したあと、翌日の月曜日に休日振替するつもりが、休めずに出勤、結局締め日までに代休を取れなかった。
日曜日8時間分が残業代不足。
年俸合算型
年俸に残業代も含めている。含めている残業時間、残業代が不明確。
年俸に含めた残業時間20時間、実際の残業時間が30時間
10時間残業代が不足。
定額型と同じ問題が起こります。
法律無視型
  • 何時間残業しても、残業代そのものが0円。残業自体一切無視。
  • 変形労働時間制なしの1日8時間勤務なのに、毎週土曜日が通常出勤。
  • 毎週40時間超えなのに、土曜出勤しても残業代なし。
  • 残業代は時間単価1.0倍×残業時間で計算。時間外、深夜、休日などの割増率はとにかく無視。
  • 休憩の定めなしで、終業時刻17:00なのに残業時間のカウントは19:00以降、毎日2時間分は無視。
  • 時間単価は基本給だけで計算。役職手当、皆勤手当はすべて無視。
  • 変形労働時間制を採用しているが、届出や労使協定なしで勝手に運用。

変形労働時間制とは?

1日8時間、1週40時間が労働時間の原則です。1週40時間が守られているかどうかを単純に1週間ではなく、変形期間(1ヶ月〜1年)の中で守られているかどうかを判断しましょう、と考える制度です。これにより一定のルールはありますが、労働時間を弾力的に運用することが出来ます。

1箇月単位の変形労働時間制(法第32条の2)

労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間を超えない定めをした場合、特定された週において40時間(特例事業44時間)、又は特定された日において8時間を超えて労働させることができます。使用者は、労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。1日の拘束時間が長く、交代勤務を採用する飲食店、病院など、労働時間や休日を毎月シフト表で管理・運用している会社さまに向いています。

労使協定は、40時間(44時間)を超えない旨、変形期間、変形期間の起算日、対象労働者の範囲、変形期間の各日及び各週の労働時間、協定の有効期間を定める必要があります。これにより労使協定の定めるところにより労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果が生じます。

変形期間中の所定労働時間の上限時間の計算

40時間×暦日数÷7日=上限時間となります。

暦日数が31日→40時間×31日÷7日=177.1時間
1か月の暦日数 各変形期間に対応する所定労働時間の上限
法定労働時間が40時間の場合 法定労働時間が44時間の場合
31日の場合 177.1時間 194.8時間
30日の場合 171.4時間 188.5時間
29日の場合 165.7時間 182.2時間
28日の場合 160.0時間 176.0時間

フレックスタイム制(法第32条の3)

次の要件を満たした場合は、1週において40時間(44時間)を超えて、又は1日において8時間を超えて労働させることができます。清算期間(1ヶ月以内の一定の期間)の総労働時間を定めておいて、各労働者がその範囲内で自由に各日の始業時刻と終業時刻を選択できる制度です。

(要件)
  1. 就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる。
  2. 労使協定により下記事項を定めている。
    1. フレックスタイム制をとる労働者の範囲
    2. 1箇月以内の清算期間
    3. 清算期間における総労働時間
    4. 標準となる1日の労働時間
    5. コア・タイムを定める場合には開始及び終了の時刻
    6. フレキシブルタイムを定める場合には開始及び終了の時刻
  3. 清算期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間(44時間)を超えない。

実際に労働した時間が清算期間の労働時間と比べ過剰であったときはその期間で清算、不足があったときは次の清算期間の労働時間に上積みすることができます。

注意ポイント!

派遣労働者を派遣先においてフレックスタイム制の下で労働させる場合には、派遣元の使用者は、次のことを行う必要があります。

1年単位の変形労働時間制(法第32条の4)

労使協定により、次の事項を定めたときは、1年以内の対象期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内において、特定された週に40時間を超えて、又は特定された日に8時間を超えて労働させることができます。建設業や百貨店などの販売業のように年間を通じて業務の繁閑を繰り返す業種において、それぞれの事業形態にあわせた労働時間を設定することにより、労働者が効率的に働くことや労働時間の短縮を可能にしたのが、1年単位の変形労働時間制です。そのほか祝日や夏季休暇・年末休暇を多めに休み、土曜日を何日か出勤させたい会社さまにも向いています。

(定めるべき事項)
  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 対象期間(1箇月を超え1年以内の期間)
  3. 特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間)
  4. 対象期間における労働日、及び労働日ごとの労働時間

    対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分する場合は、対象期間の初日の属する期間における労働日及び労働日ごとの労働時間と最初の期間を除く各期間の労働日数及び総労働時間

  5. 有効期間

対象期間が3箇月を超える場合、1年当たりの労働日数は280日が限度となります。また、労使協定は所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。

(例外)
積雪地域の建設業の屋外労働者等

1日10時間、1週間につき52時間が限度です。

しかし、3ヶ月を超える場合の条件を満たす必要はありません。

タクシー業(隔日勤務)の場合
原則の規定のうち、1日の労働時間の限度を16時間に読み替えます。
注意ポイント! 1年単位の変形労働時間制を採用する事業場において、その対象となる労働者が対象期間中に退職した場合、賃金を清算するため、当該労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合においては、その超えた期間の労働については割増賃金を支払わなければなりません。

1週間単位の非定型的変形労働時間制(法第32条の5)

使用者は次の要件を満たした場合は、1日について10時間まで労働させることができます。

(要件)
  1. 小売業、旅館、料理店、飲食店
  2. 常時使用する労働者が30人未満
  3. 労使協定により、1週間の所定労働時間を40時間以内とする。
  4. 労働者に1週間の各日の労働時間を、少なくとも1週間の開始する前に書面により通知する。
  5. 労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出る。

変形労働時間制の適用の制限(法第66条)

使用者は、妊産婦が請求した場合は、変形労働時間制(フレックスタイム制を除く)を実施している場合でも、妊産婦を1週間及び1箇月について法定労働時間を超えて労働させてはなりません。フレックスタイム制を除き変形労働時間制を適用できません。

年少者(満18歳未満)は変形労働時間制を適用することはできません。

例外として、満15歳以上満18歳未満の者(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までを除く)は、1週間について48時間以下の範囲内、1日について8時間を超えない範囲で、1箇月単位及び1年単位の変形労働時間制を適用することができます。

変形労働制のメリット&デメリット

それぞれの一長一短ですので、御社の状況にあった制度をご検討することをオススメします。

◎はメリット、△はデメリットです。

1ヶ月単位の変形労働時間制
オススメ業種:飲食店、病院、コンビニ店、24時間稼動の製造業
労使協定なしで就業規則に定めれば、即導入可能。
1日・1週の労働時間に上限がないから自由に設定可能。所定労働時間内は残業代不要。
年間休日日数、労働日数、連続労働日数も制限を受けない。
シフト表を変形開始の前日までに作成・通知できれば運用可能。
1ヶ月以内に週40時間をクリアする必要があるので、弾力性に欠ける。
1年単位の変形労働時間制
オススメ業種:建設業、デパート、製造業、士業
1年を通して1週40時間を達成すればよいので、祝祭日やヒマな月の労働時間を忙しい時期に移動させて残業時間を減らせる。休日と労働時間の両方を調整できる。
土曜出勤があるため、完全週休2日制を採用できなくても、合法的に40時間を達成できる。
1日10時間・1週52時間まで、労働時間に上限がある。
労働日数280日以下、・休日数85日以上にしなければならない。
カレンダーを組んだ後は、休日を恒常的に変更できない。一定の拘束があり。
毎年労使協定が必須なので、手間がかかる。就業規則にも当然記載が必要。
カレンダーを変形開始の30日前までに通知しなければならない。
フレックスタイム制
オススメ業種:デザイン・企画会社、みなし時間制の導入をお考えの会社様(テスト運用にオススメです)
労使協定の締結は必要ですが、届出は不要。
1ヶ月以内の清算期間内を平均して1週40時間を満たせばよいので、業務の繁閑を調整しやすい。
1日、1週の労働時間を特定する必要が無い。(労働者任せ!のためデメリットにもなる)
年間休日日数、労働日数、連続労働日数も制限を受けない。
始業・終業時刻が労働者任せになるので、組織として時間的にまとまりづらくなる。(朝礼・会議)
労働時間が労働者任せになるので、個人の職務能力に差がありすぎると管理に困る。
借り時間(不足時間)が発生後、翌月も不足時間が出たときに管理が複雑になる。

みなし労働制とは?

時間管理を労働者に任せて、「1日単位で○時間働いた」とみなす制度です。今の時代、時間だけで管理できないクリエイティブな業務が多くあります。また交通・通信の発達により常に事業外で仕事をする労働者には時間管理が及ばない状況もあります。このような働き方に対処することを目的にしているのが、「みなし労働制」です。

「みなし労働制」は大きく分けて2つの種類があります。

  1. 事業場外みなし制
  2. 裁量労働制
    1. 専門型
    2. 企画型

そしてこの「みなし労働時間制」は1日に何時間仕事を行っても、労使間で協定した時間を労働したとみなしますので、1日9時間と協定した場合は、仮に10時間労働しても、労働時間は9時間とみなされ、残業手当の支払が不要です。(但し、休日・深夜割増は必要です)反対に5時間しか労働しなかった場合でも労働時間は9時間と扱いますので、4時間分の賃金カットはできません。

裁量労働制は、適用する対象が限られており、導入にもいくつかの制約がありますから、十分に内容を検討の上、導入することが大切です。もし間違って運用していると、残業手当の支払を命じられるなどの原則的な法定労働時間の規制を受けることもあります。

最後に最も注意したいことは、「みなし労働制」を導入したために、残業時間が長時間化する可能性があることです。残業代の支払が不要なので、時間管理がおろそかになり、業務効率が落ちることもあります。

十分注意の上、運用してください。

1.事業場外みなし制

外回りの営業職を主に対象とします。条件は「使用者の具体的な指示管理が及ばず、労働時間の算定が困難」であることです。常に携帯電話で上司の指示を受けるような場合は該当しません。

そして内勤時間は労働時間の管理が可能ですから、会社は別途労働時間を把握する義務があります。

協定する時間は「通常の状態でその業務を遂行するために必要な時間」とされています。

協定時間が法定労働時間8時間を超える場合は、労働基準監督署へ届出が必要ですが、36協定に付記することで代えることが可能です。

協定例
1日9時間 始業9:00、終業18:00の所定8時間の会社の場合
9:00〜19:00の9時間労働したとみなします。(残業時間は1時間と考えます)

2.裁量労働制(1.専門型、2.企画型)

1.専門型

専門型は業務の性質から、労働時間の配分を労働者の裁量に任せる必要があるので、会社が具体的に指示することが困難なために適用される制度です。

業種は法令で定める19業種に限定されています。拡大解釈しないよう、注意してください。

詳しくはコチラ

労使協定で対象となる業務、業務遂行の具体的な指示を労働者にしないこと、1日のみなし時間等を定めます。みなし時間制を採用しても、休憩、深夜残業、年次有給休暇の取扱は通常通りです。

制度の導入に当たっては、原則として次の事項を労使協定により定めた上で、様式第13号により、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。就業規則にも始業、終業の時間をきちんと規定しておきましょう。

  1. 制度の対象とする業務
  2. 対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
  3. 労働時間としてみなす時間
  4. 対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
  5. 対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
  6. 協定の有効期間(3年以内とすることが望ましい。
  7. 4. 及び 5. に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

このみなし制では、適用業種であっても、プロジェクトチームでチーフの指揮命令下に作業するスタッフは該当しませんのでご注意ください。ルーティンワークばかりさせている場合も該当しません。

法定労働時間を超える時間分の25%、法定休日135%、深夜時間帯25%の割増賃金を支給する必要があります。みなし時間制は長時間労働になりがちなので、会社は健康・福祉・苦情処理措置を講じなければなりません。中小企業にとっては少々負担のある制度だといえます。

2.企画型

事業運営に関する企画・立案・調査・分析の業務で業務遂行方法を労働者の裁量に任せることが必要な業務に適用されます。つまり特定のホワイトカラーに限定されます。条件はこの他、業務遂行方法を会社が具体的に指示しない、業務遂行の能力・知識・経験が豊富な労働者を対象とすることです。

このような業務ですと、ホワイトカラー全体に広まってしまう危険があるため、採用要件はさらに細かくなっています。

例えば労使委員会を設置すること、対象労働者の同意を得ることが定められていますので、専門型よりもかなり導入条件が厳しくなっています。個別の製造等の作業や当該作業に係る工程管理のみを行っている事業場や本社・本店又は支社・支店等である事業場の具体的な指示を受けて、個別の営業活動のみを行っている事業場は、企画業務型裁量労働制を導入することはできません。

なお、従前の報告事項から「苦情処理措置」について削除されましたが、労使委員会における決議がなされることが必要であるとともに、その適正実施が必要です。また、苦情処理措置として講じた内容について、その記録を3年間保存する必要があります。

このように採用要件がいろいろと厳しいために、導入している会社はきわめて少数です。

今後採用要件の緩和が行われれば、導入件数が増加してくることでしょう。

残業管理の15のコツ

自社の労働時間を正確に把握しましょう。まずそこからです!

法定3帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカード))を整備します。

ここできちんと年間平均残業時間も算出してみましょう。

御社の残業特性が見えてくれば、対策が決まってきます。

  1. 繁忙期とその期間の残業時間から、所定労働時間と年間休日数の見直しを検討しましょう。

    現在の所定労働時間が法定労働時間の8時間未満である会社様の場合、改善の余地があります。

  2. 所定労働時間と法定労働時間の違いをまず理解!

    その上で自社の所定労働時間が適切か、検討しましょう。所定7時間労働の会社さまで、恒常的に残業時間が1時間を超えるなら、所定労働時間8時間に増やすことで1時間分の法定内残業代が削減できます。また、この1時間分の残業代を1.25倍で支給しておられる会社さまは1.0倍の計算で合法ですので、計算方法の見直しだけでも残業代削減になります。

    但しこれは就業規則や社員さんの個別の同意が必要になりますので、スムーズな同意を得るためにも、代替案や交渉方法など事前の準備・対策が必要です。

  3. 休憩時間を検討しましょう。

    手持ち時間やヒマな時間帯が特定できれば、そこに休憩時間を追加して、トータルで残業時間を削減します。

  4. 振替休日を計画的に導入しましょう。

    割増賃金の上昇を抑えてくれます。

  5. 変形労働時間制を検討してみましょう。

    業態別にオススメがあります。

    1日8時間、1週40時間を超えても働ける良い制度があります。自社の状況に適した変形制の導入は有効です。

  6. みなし労働時間制を検討してみましょう。

    実際の労働時間ではなく、労使協定で定めた「みなし時間」で労働時間を判断する制度で、残業代が削減できます。但し、導入できる業種が限定されていたり、導入条件がありますから、注意が必要です。

  7. フレックスタイム制を検討してみましょう。
  8. ノー残業デーの創設を検討しましょう。

    これは全社一斉、部単位、課単位に残業なしで強制的に帰宅させる制度です。この制度導入には、社員の業務進捗状況を上司が正確に把握していなければなりません。その結果、効率的な業務・時間管理を促進させます。そして実施する規模が大きくなれば、残業代削減の効果は非常に大きいものになります。

    当然上司は率先して行動させなくてはなりません。

  9. 長期休暇時に有給休暇の一斉付与を検討しましょう。

    休日を増やさずに社員を休ませることができます。

  10. 残業時短とあわせて、固定残業代の導入を検討しましょう。

    固定残業代とは、毎月の残業代を固定金額で支払うことです。

    基本給に残業代が含まれて設定されているのでしたら、それを基本給と残業代ときちんと分割して支給しましょう。これは労働者にとっては不利益変更になることですので、十分に話し合って、個別に同意書を取っておくことが必要です。実際の残業時間と割増分も考慮して残業時間を逆算することが大切です。

    そして固定残業代から具体的に何時間分の残業になるのかを、就業規則や雇用契約書、給与明細書にも記載しておきます。しかし、実際に残業した時間が固定残業代を上回る金額になれば、その超過分は別途支払が必要です。会社が残業時間管理をしなくてもよいわけではありません。

    固定残業代を導入するためには、就業規則や社員さんの個別の同意が必要になります。

  11. パートタイマーを活用して、正社員の残業時間帯を短くする。

    正社員の残業代は割増分が加算されるので、割高になります。

    短時間のパートタイマーを活用できれば、割増分が不要になることが多いので、総人件費を抑えることが可能です。

  12. 振替休日と代休の取り方を見直しましょう。

    割増賃金が発生しないよう、同一週内での計画的な付与が重要です。

  13. 給与の諸手当を見直してみましょう。

    例えば「成果給」「実績給」の要素を組み入れて、労働時間ではなく、社員の評価が給与に連動する仕組みを考えます。但しこれは就業規則や社員さんの個別の同意が必要になります。

  14. 残業を事前申告制で厳格管理しましょう。

    労働時間の記録の仕方にも工夫しましょう。

    ダラダラ残業、勝手残業は根絶します。きちんと社員に残業の理由・残業時間を事前に申告させます。

    上司の命令・承諾による残業以外、許してはなりません。会社の権利です。

  15. 管理者に部下の残業時間の責任を持たせましょう。

    管理者の当然の職務です。部下のダラダラ残業、勝手残業を許しては、職務怠慢です。

    タイムカードも管理者が見やすい場所へ移動させ、管理を徹底します。

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